そば・うどんのあれこれ質問コーナー

ここでは、そば・うどんを打つにあたってのいろいろな質問にお答えします。と言っても、見当違いの答えや、もっといい答えがいっぱいあると思います。その時は、お叱りのメールも待っております。今まで教えてきた中で、多かった質問の中から、役に立ちそうなものをピックアップしました。

そば編

Q.手打ちそばの道具は高価なものが多く、全部揃えると何万円にもなってしまいますが、一通り揃えないといけないのでしょうか。
A.どうしても必要なもの以外は、家庭にあるもので代用OKです。麺棒・こま板・そば切り包丁は揃えることをおすすめいたします。その他の道具は、必ずしも揃えなくてもいいと思います。こね鉢は、大きめのボウルまたは鍋で代用できますし、ふるいもなければザルを使ってもOKです。打ち台ですが、テーブルの上にベニヤ板を両面テープで貼り付ければ使えます。

Q.いいそば粉とは、どんなそば粉でしょうか。
A.次の条件を満たせば、いいそば粉であると考えていいと思います。
@国内産のものであること
A穀物の時から麺になるまでの間で熱を持たないこと。
B製粉されてからの時間が経っていないこと
@は国内産のものならおいしく、外国産のものはまずいというのではありません。外国産のものでも、おいしいそば粉があるのです。しかし、輸送の間に熱を持ったりして劣化する場合があり、質がいいとは言えないものが多いようです。その点国内産のものは、外国産に比べると、管理もしっかりしており、劣化することは少ないようです。国内産の中でも特に、高冷地のものは、味もよく、珍重されております。おそばで有名な信州でも、標高の高い乗鞍高原や開田高原の玄そばは、標高の低いところのものと比べ、2倍以上の値段がつくこともあります。一般にはなかなか出回りませんが、手に入れば打ってみてはいかがでしょうか。
Aは、粉の劣化の一番の原因である、熱の問題です。穀物の時、製粉される時、運搬される時、お店等で保管される時、それぞれに注意しなければなりません。特に、製粉される時に熱を持ってしまうことが多く、注意を要します。そのため、石臼の回転を遅くしたり、ロール製粉なら、製粉した後そのまますぐ冷蔵できるような設備を備えたりと工夫をしています。手打ちそばやさんで自家製粉をしているところが多いのも、この熱の問題を解決するためと、次の製粉したての粉を使いたいという二つの理由が大きいのです。
Bの製粉してからの時間の問題ですが、これがとても大切なのです。そば粉は製粉してそのままにしておくと、味がまったく変わってしまいます。つまり、保存がきかないのです。別に腐るわけではありません。風味がなくなってしまうのです。その点、小麦粉は、保存状態がよければある程度時間が経ってもそば粉ほど味に変化がないので助かります。2〜3ヶ月は粉のままの保存が可能なのです。しかし、そば粉は違います。できれば5日、最低でも10日以内には麺にして食べて欲しいのです。粉屋さんからお店に到着した時点で2〜3日は経っていますので、普通においしいものを出したいと考えるなら、自家製粉になってしまうのも、そば粉のそんな足の早さに大きな原因があるのです。

Q.そば打ちを習い、たまには打って食べるのですが、いい粉を探すのに苦労しています。どのようにしたらいいでしょうか。
A.普通粉を入手する方法は、製粉やさんから買うか、そば屋さんから分けてもらうかのどちらかでしょう。製粉屋さんの場合は小分けしてくれないところもありますが、頼めばけっこう1キロ単位で送ってくれるところも多くあります。ポイントは、いいそば粉屋さんを選ぶ事。いいそば粉やさんとは、いいそばの実を持っている事、常に商品が回転していること、つまり粉が新しい事、製粉に気を使っている事等ありますが、調べる事もなかなかできないと思います。柴田書店から年一回秋に発売される「そばうどん」という雑誌があるのですが、それにいつもいくつか粉屋さんの広告が出ていますので、そんなのを参考にしながら、日本各地からご当地の粉を取り寄せ、味の違いを比べてみるのもおもしろいのではないでしょうか。地方にはけっこう小さいけれど良心的な粉屋さんも多くがんばっています。ここで大雑把な粉の値段とグレードの関係を申し上げます。あくまで一つの目安でこれに当てはまらないものもあるとお考え下さい。そば粉はほとんど一袋22Kgですが、これで8000円以下のものは、ほぼ100%、外国産です。一万円なら、少し国内産のものがブレンドされ、一万五千円を越えると純国産のものが出てきます。一万八千円を越えるとほぼ純国産、それ以上になると信州産だとか、常陸秋そばだとか、ブランド的な要素が加わってきます。ざっとこんな感じですが、1キロ単位だと、当然割高になります。次におそば屋さんから分けてもらう方法ですが、これはおいしいおそば屋さんの馴染み客にでもなり、お願いして分けてもらう方法です。自家製粉している店なら、新しいものが手に入り言う事ありませんが、しかしこだわってる店の場合、産地等にもこだわっているでしょうから、なかなか分けてもらうのも大変かもしれません。と言うのも、いい産地のそばの実は、収穫量も限られており、なかなか入手が大変なのが現状だからです。しかし、お願いすれば分けていただけることもあるので、がんばってみてください。

Q.私は黒味の強いそばが好きなのですが、どのように調節すればいいのでしょうか。
A.なかなか入手が難しいかもしれませんが、「さなご」と言って、黒さを増すために使う粉があるので、それを入手するかひきぐるみの三番、四番粉を探してみたらいかがでしょうか。一番オーソドックスなのは製粉屋さんから田舎粉とかひきぐるみ粉を求めればいいと思います。

Q.私はそば打ちを初めて間がないものですが、ぜひとも十割そばを打ちたいと思っています。可能でしょうか。
A.十割そばとは、なかなか大変ですが、できないわけではありません。そのためのいくつかの方法を挙げてみます。まず最低条件としては、手早く打てるようになることです。というのは、そば粉は打ってるそばからだんだんと固くなっていきます。打つのに時間がかかるうちは、ぶつ切れになりやすいのです。そばの実の中で、甘皮と言われる部分は粘りが強く、そばの切れを少なくしてくれます。その甘皮が多く入っているそば粉なら、切れづらく十割でもそばが打ちやすくなります。しかし、欠点が一つ。入れすぎると、歯にくっつくくらい粘っこいそばになってしまいます。この粉は、大きな製粉会社では扱っている所もありますが、一般の人は入手が難しいと思います。そこで甘皮の多く入っている粉をさがせばいいわけですが、それは黒目の強い粉をお探しください。甘皮の部分も多くくっつきがいいので、十割でも切れないで打てるかもしれません。
次に友つなぎといってそば粉をつなぎに使うやり方です。まず、粉に対しての適量の水を沸騰させます。そこにそば粉全体の10分の1の重さのそば粉を入れよく混ぜ合わせます。それをそのままあとの10分の9のそば粉の中に入れ菜箸でよく混ぜ合わせます。あとの工程は普通の打ち方と一緒ですので一度お試しください。

Q.
そばを打つ何回かに一回はぶつ切れる、短いそばになってしまいます。どうしたらいいでしょうか。
A.そばが切れる原因は、いろいろあります。まず、粉にくっつく成分が少ない場合、そば粉にはくっつく成分があまり入っていないので、そば粉のみで麺にするのはなかなか大変です。そばの中でも甘皮の部分はグルテン成分が多いので、その部分が多く入っていればそばになりやすいですが、それでも小麦粉・やまいも等でグルテンをプラスしてあげなければぶつ切れるそばになってしまう場合もままあります。。その量が少ない場合、そばは切れやすくなるわけです。
次に、水が少ない場合、つまりだんごがすごく固い時は切れやすくなることがあります。
次に、水合わせが十分でないうちにだんごにしてしまった場合です。粉に水を入れ混ぜ合わせますが、最初パサパサした状態で周りが粉っぽい感じです。それをよく手で混ぜ合わしてるうちに、全体がしっとりとしてきます。そのしっとりしてくる前に、無理矢理玉にしてしまうと粉のところとしっとりしているところのムラができ、その粉の部分から麺は切れやすくなるのです。
次、打つのがすごく遅い場合。そばは時間が経つにしたがって硬化していきます。一時間もかけて打っていると、切れやすくなってしまいます。できれば、水合わせから切りまでを20分以内に打つようにしてください。速く打てば包丁の入りもよく、きれいなそばになります。
次に粉が完全に劣化してしまった場合。何ヶ月も前の粉の場合は切れてしまうかもしれません。
とまあ、私が思い付くのはこんなところでしょうか。たぶんこれらの中に入っていると思います。あと一つありました。もみ過ぎた場合です。もめばもむほど腰が出るといって、何十分ももんでる方が時たまいますが、その場合は切れやすくなると思います。だんごにして表面がつるっとした感じになったらもみを終わり、次の作業に移ってけっこうです。

Q.水合わせをして、すごく固い場合、逆に柔らかい場合の対処法を教えてください。
A.これは大変です。そうならないようにきちっと水を計ったり、一回一回記録を取っておくなどして、そうならないために万全を期してください。と言ってもやっぱり柔らかくなったり固くなったりはするものですよね。もしそばになりそうな固さ、柔らかさだったら、そのままそばにしてください。それを越えてる場合ですが、まず柔らかい場合、だんごを細かくちぎってください。できるだけ小さくして粉を足し、よく混ぜあわせます。このとき、上から力を入れるようなことはしないでください。下から持ち上げるような感じで手早くしっとりするまで混ぜ合わせます。全体がしっとりしてきたら、だんごにして打ってください。あまりにも水を入れすぎてやわらかくなってしまったら、そばにするのはあきらめてください。細かくちぎってすいとんにでもして食べた方がいいと思います。
次に固い場合ですが、この時は何個所か割ってください。下の一部は切り離さないようにして、割れ目を入れます。割れてザラザラした部分に適量の水をパラパラと振り掛けます。そしたらすぐもみ始めてください。最初は水の部分がすべってもみづらいかもしれませんが、それでももんでると、だんだんと水と粉の部分のムラがなくなってきます。完全になくなれば、次の作業に移ってOKです。

Q.麺棒での延ばしの時、麺棒がうまく回らず困っています。どうしたらいいでしょうか。
A.理由は二つ。そのどちらかだと思います。麺棒に問題があるか、手の動かし方に問題があるかです。まず麺棒ですが、表面がすべりやすい材質のものを使っていますか。または、加工に問題はありませんか。私はホオの木の麺棒を使ってますが、すべりが良く、とてもやりやすいです。一度2000番のサンドペーパーでこすればすべりやすくなる場合もありますので、お試しになったらいかがでしょうか。木の材質によってはダメなこともありますので、注意してください。麺棒が曲がっている場合は、三本を束にして何ヶ所かきつくしばり、しばらくそのままにしておけば、矯正される場合もあるのでやってみてください。
次に手の動かし方ですが、麺棒を前に転がす時に少しずつ手の間隔を狭め、手前に戻る時は外側から円を描くような感じで動かしてみてください。少しは回りやすくなるかもしれません。

Q.切る時、まな板がずれてしまいます。どうしたらいいでしょうか。
A.専用のまな板を一つ作るといいと思います。手前の裏側にまな板が前にずれないように、四角の棒を打ち付ければそれが滑り止めとなって切りやすくなります。

うどん編

Q.うどんの粉の選び方を教えてください。
A.これは難しいんです。うどんにして食べておいしい粉と一口に言ってしまったら、身も蓋もないでしょうか。とにかくそれを前もって知る、例えば粉を見ただけでわかるかと言われれば、難しいと思います。粉のカタログ等を見ると、灰分○%とか小麦蛋白○%とか書いてありますが、灰分というのは早い話、粉の色の黒さの度合いです。灰分が低い方が色が白く、値段が高いわけです。蛋白というのは、つながり度とでも言うのでしょうか。低いのは薄力粉、高いのは強力粉ということです。蛋白の高い粉でうどんを打つと、コリコリとした感じが強いうどんになります。そのような数字も一つの参考にはなりますが、同じ灰分や蛋白の粉でも味が同じかと言えば、そんなことはないのです。黒さの度合いやシコシコ感は似るのですが、見た目といったらいいのか、きれいな透明感が出るとか出ないとか、食感にぬめりがあるかとかはこの数字からはわかりません。黒味が強くとも、きれいな透明感が出る粉もありますし、透明感はあるけれどぬめりのある粉もありますので、とにかくなかなか奥が深いというか、難しいもんです。ですから本当にいい粉に出会った時などは、とってもうれしくなってしまうわけです。無難という意味では、オーストラリア等から来る「スタンダードホワイト」という真っ白な粉を使えばいいのですが、ちょっとおもしろみに欠ける気もしますが、かなりおいしいことも事実です。できれば身近にある材料で、いいものを選んで欲しいと思いますし、おもしろみという点ではほんの少し黒味があって、透明感があり、食感のいい地粉がいいと思うんですが、けっこうはずれもあって、地粉のいい粉探しはなかなかおもしろいというか、大変だったりもします。ちょっと収集がつかなくなってしまいましたが、参考になりましたでしょうか。

Q.うどんを打ってると途中から固くなり、とても打ちづらくなることがあるんですが、どうしたらいいでしょうか。
A.それはグルテンが形成され、網目状に絡み合った状態ですので、一旦休ませてください。ビニールをかけて空気に触れないようにして、10分程度置いておくと、また打ちやすくなります。

Q.うどんの水合わせを失敗した時の対処法を教えてください。
A.まず柔らかい時。だんごにする前なら粉を全体にかけ、よく混ぜあわせます。そのまま全体がしっとりするまで混ぜあわせてください。だんごにしてしまった後なら、細かくちぎって粉をふりかけ、ひたすら混ぜあわせます。一回でやろうと思わず、混ぜて寝かせてを繰り返してください。しっとりとした感じになったら、だんごにしてOKです。寝かせる時、ビニールをかけておくのを忘れずに。
次、固い場合。これはおそばとまったく同じやり方ですが、だんごを何ヶ所か割るようにしてその割った部分に塩水を振り掛けて、もみ込んでください。

Q.うどんの塩分について教えてください。
A.土三寒六常五杯、四国で昔から伝わる、うどんを打つ時の季節と塩水の濃さとの関係を表した言葉です。土用は三で、寒は六。それ以外は五杯ということで、一定の塩に入れる水の量のことで、つまり夏は濃く、冬は薄いということです。日本にはうどんで有名な地方がいくつかあります。讃岐を筆頭に、秋田の稲庭、群馬の水沢等、中にはまったく塩を入れないで打つ地方もあるようで、それぞれの特色を持っています。なぜ夏が濃く、冬が薄いのかというと、それは熟成と関係あります。夏は気温が高く、熟成を通り越して腐りやすいので、それを押えるために塩を多く入れるのです。讃岐では一般に塩を多く使います。夏はボーメ15度、冬は8度くらいが多いみたいです。ボーメとは、塩水に入っている塩の量を現す単位で、ボーメ15度といえば、15gの塩と85gの水を合わせるとできます。ボーメ10度だったら、90gの水と10gの塩ということです。塩の濃さを季節によって調節するのですが、例えば同じ季節でも沖縄と北海道では同じではありません。温度によって調節します。ボーメ15度といえば、びっくりするくらいの濃さですので一般家庭でうどんを打つ場合は、夏でボーメ10度、冬で5度くらいが打ちやすいと思います。しかし塩水の濃さによって食感等が違ってきますので、塩を多くしたり少なくしたり、いろいろと試してみたらいかがでしょうか。ちなみに地方によっては打ちあがったうどんを棒などにかけて1時間ほど干すやり方をしているところもありますので、こちらも一度お試しになってはいかがでしょうか。